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保育園を開業・経営するための準備や費用~成功するためのポイントまで解説
保育園の開業は、比較的に低価格で始められ、資格がなくてもできるので、初めて経営に挑戦する方も多いです。この記事では、保育園の開業に必要な資金や、事前の準備、成功するためのポイントについて解説します。
この記事の目次
認可保育園と認可外保育園の違い
保育園を開業・経営する際、まず最初に理解しておきたいのが、認可保育園と認可外保育園の違いです。
形態 | 認可保育園 | 認可外保育園 |
保育士の人数 | ・0歳:子ども3人に保育士1人
・1~2歳:子ども6人に保育士1人 ・3歳:子ども20人に保育士1人 ・4歳以上:子ども30人に保育士1人 |
・保育時間が11時間以内の場合は認可保育施設と同一の配置基準(保育者の3分の1以上が保育士または看護師)
・保育時間が11時間以上の場合は、保育されている児童が1人である場合を除き、常時2人以上を配置 |
施設の面積 | ・0歳、1歳児
乳児室:1.65㎡/人 ほふく室:3.3㎡/人 ・2歳児以上 保育室:1.98㎡/人 園庭:3.3㎡/人 |
乳幼児1人あたり1.65㎡以上 |
開所時間 | 原則11時間 | 無制限 |
自治体の審査 | あり | 開業時の届出のみ |
認可保育園
認可保育園は、厚生労働省が定める基準を満たしている保育施設です。これらの基準には、建物の安全性や衛生状態、保育士の資格や人員配置などが含まれます。
特徴としては、保護者からの信頼が厚く、運営・開業費を国や自治体から補助金で援助してもらえることです。補助金を受けるためにも規定や審査がありますが、開業・運営費の負担を少しでも軽減できるのは大きいでしょう。
一方で、国や自治体の厳しい規制の下で運営されるので、自由度は低くなります。また、補助金等の手続きも時間がかかり、複雑な面もあるので、初めての開業には難しいと感じ方もいるでしょう。
認可外保育園
一方、認可外保育園は、厚生労働省が定める基準を満たしていない保育施設です。
例えば、以下は全て認可外保育園となります。
・夜間保育園
・託児所
・ベビーホテル
・ベビーシッター
・一時預かり事業
特徴としては、認可保育園と比較して自由度が高く、園として特徴を出しやすいことです。少し工夫したサービスや特徴を売りにすることで、園児も多く集められるでしょう。
しかし、補助金が支給されません。資金面で余裕がない方は、自己資金や融資など別の方法で集めるしかありません。
保育園を開業するための準備
保育園を開業する際には、慎重な準備が必要です。ここでは、保育園を開業するための基本的なステップを解説します。
保育園の種類を選ぶ
保育園には、認可保育園と認可外保育園の2つの種類があります。
認可保育園と認可外保育園の違いは上記で述べたとおり、自由度や補助金等が支給されるかが大きいです。認可保育園の場合は、基準を満たす必要があるので、必ず確認しておきましょう。
保育施設を決める
保育園の場所や建物は、保育園の成功にとって重要な要素です。
子供たちが安心して過ごせる環境であること、周囲の環境やアクセスの便が良いことなどを考慮しましょう。
また、園の大きさによっても開業費用や運営費用も変わってくるので、予算に合った大きさで始めることが良いでしょう。
事業計画書を作る
事業計画書は、保育園の運営における方針や目標をまとめた重要な文書です。具体的な事業内容、財政状況、集客戦略などを明確にしましょう。
認可外保育園であっても、開業時に自治体に提出しないといけないので、審査に通るようにきっちりとした計画書の作成が必要です。
保育園長と保育士を採用・教育する
年齢 | 保育士の配置数 |
0歳児 | 子ども3人につき1人以上 |
1・2歳児 | 子ども6人につき1人以上 |
3歳児 | 子ども20人につき1人以上 |
4歳と5歳児 | 子ども30人につき1人以上 |
保育園を運営していくためには、保育士の人数が決まっています。上記の表以上の保育士の人数がいないと運営ができないため、保育士は早めに募集しておきましょう。
また、認可外保育園の場合、保育者の3分の1以上が保育士または看護師の資格を保有していることが条件です。
さらに重要なのは、保育園長の採用です。保育士をまとめるためのスキル、保育士としての経験などを持った方を採用しましょう。採用後は、しっかりと園を運営するための研修も行う必要があります。
資格や免許等の手続き
保育園を開業するには、認可保育園と認可外保育園のどちらも、各自治体に届け出が必要です。
・認可保育園…「児童福祉施設設置認可申請書」
・認可外保育園…「認可外保育施設設置届」
認可外保育園の場合、自治体によって基準や書類が異なる可能性があるので、確認して行いましょう。
保育園を開業・経営するための費用は?
保育園を開業・経営するためには、費用について理解し、計画を立てることが不可欠です。ここでは、保育園を開業・経営する際にかかる費用について詳しく解説します。
保育園開業の初期費用
20~30坪、園児20~30人を想定
初期費用は約400万円~600万円ほどかかります。
項目 | 金額 |
不動産取得費 | 100~150万円 |
内装工事費 | 100~150万円 |
設備費 | 100~150万円 |
備品・消耗品費 | 80~100万円 |
広告宣伝費 | 50万円 |
上記に記載している項目が、主に保育園を開業するときの費用です。園の大きさや人数、設備の充実差によっても変わってきます。
一般的に飲食店等を開業する場合、1,000万円以上かかることも多いので、決して高くはありません。
保育園開業の運営費用
20~30坪、園児20~30人を想定
運営費は月200万円前後です。ただし、従業員の数や福利厚生など様々な要因によって変わります。
主な運営費の割合は以下の通りです。
項目 | 割合 |
人件費 | 50~80% |
賃貸料 | 5~15% |
水道光熱費 | 2% |
給食費 | 3~5% |
消耗品費 | 1~3% |
保険料 | 1~3% |
広告宣伝費 | 1~3% |
ほとんどが人件費や賃貸料となっています。年齢が低い子供をたくさん預かれば預かるほど、従業員の配置人数もたくさん必要なので、人件費もかかります。
ただ、保育園では保育士が欠かせないビジネスなので、人件費には投資するべきです。
また、フランチャイズで開業する場合は、本部によって異なりますが、さらにロイヤリティが数%かかります。
保育園開業で活用できる補助金・助成金
保育園を開業するときに活用できる補助金や助成金についてお伝えします。
就学前教育・保育施設整備交付金(旧保育所等整備交付金)
この交付金は、保育所等、保育所機能部分又は小規模保育事業所の新設、修理、改造又は整備に要する経費、並びに、防音壁の整備及び防犯対策の強化に係る整備に要する費用の一部を補助することにより、保育所等待機児童の解消を図ることを目的としています。
(引用元:保育所等整備交付金について/関東信越厚生局 )
保育所等改修費等支援事業
賃貸物件を活用して保育所等を設置する際や、幼稚園において長時間預かり保育を実施する際、認可外保育施設が認可保育所等の設備運営基準を満たすために必要な改修費等の一部を補助する。また、賃貸物件による保育所等改修費等支援事業について、保育の受け皿整備の更なる促進を図るため、これまで改修に係る定員の規模に関わらず一律としていた補助基準額を、定員の規模に応じた補助基準額に見直し、引上げを行うとともに、幼保連携型認定こども園を補助対象に加える。
(引用元:【資料1】令和2年度当初予算案について 2/内閣府)
保育所等におけるICT化推進等事業
新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のため、保育の周辺業務や補助業務に係るICT等を活用した業務システムの導入を支援するとともに、都道府県等で実施されている研修について、在宅等で受講できるよう、オンライン研修を行うために必要な教材作成経費等を支援する。都道府県が実施する保育士試験の申請手続や保育士資格の登録申請手続等について、オンラインによる手続を可能とするために必要なシステム改修費等を支援する。
(引用元:厚生労働省 )
保育体制強化事業
遊ぶ場所、遊具等の消毒・清掃や給食の配膳・後片付け、寝具の用意・後片付けなど保育士の負担軽減になる業務を行う人の配置を支援する目的のものです。
保育園を開業・経営するメリットとデメリット
保育園を開業して経営していくにあたり、様々なメリットとデメリットがあります。順番に解説していきます。
保育園を開業・経営するメリット
保育園を開業・経営することには、さまざまなメリットがあります。ここでは、保育園を運営する魅力的な側面を紹介します。
社会貢献
保育園を経営することは、地域社会への貢献となります。親たちは子供を安心して預ける場所を求めており、保育園はその需要に応える重要な存在です。
子供たちの健やかな成長と教育をサポートする役割を果たすことができます。
経済的安定
保育園は一度入園すると数年間利用される方が多いので、経済的に安定したビジネスモデルと言えます。
定員や保育料に基づいて収益が見込め、長期的に収益を上げることができる可能性が高いです。
待機児童も多い現状では、需要もまだまだありそうなので、今後も集客にも困らないでしょう。
充実感とやりがい
子供たちの成長や笑顔を見ることができる保育園経営は、充実感とやりがいを提供します。
子供たちの未来に貢献し、その成長を見守ることは非常に喜びをもたらすでしょう。
地域との連携
保育園は地域社会との連携を深める機会を提供します。地元のイベントや行事に参加し、地域と協力しながら、子供たちの育成に貢献することができます。
初期費用が安い
他業種で開業するとなると1,000万円以上かかるビジネスも多い中で、比較的安い料金で開業できることもメリットの1つです。
条件をクリアすると補助金も受け取れるので、より運営もしやすくなります。 資格の取得も必須ではないので、人さえ集めることができれば始めやすいです。
保育園を開業・経営するデメリット
一方で、保育園を開業・経営することにはデメリットも存在します。以下では、そのデメリットについて説明します。
厳格な規制
保育園は厳格な法的規制と監督責任があるため、安全基準や人員配置、衛生条件などに関する要件を遵守しなければなりません。
園内で起こるトラブルで管理責任を問われて、行政処分受けることもあるかもしれません。子供の安全を第一に考え、運営していく覚悟が必要です。
初期投資がかかる
保育園を開業するには、建物や設備、保育士の雇用などに初期投資が必要です。これに加えて、運営資金の確保も重要です。
初期投資が少ないことがメリットではあったものの、少なからず初期投資で数百万円かかるので、失敗した場合のリスクは小さくありません。
人材確保と維持
保育士やスタッフの採用、教育、定期的な研修が必要です。質の高いスタッフを維持し、高い離職率を防ぐためには、労力とコストがかかります。
離職率が高い理由は、給料面や休日面など人それぞれですが、いずれにせよ働きやすい職場環境は必要です。
すぐに経営が上手くいくかわからない
保育園は親御さんの大事な子供を預ける場所なので、評判のいい保育園が選ばれていきます。
新しい保育園は情報がほとんどないので、最初から園児が集まりにくいと言えるでしょう。
フランチャイズで開業する場合は、ネームバリューを利用して経営ができるので、最初から利益を出しやすい環境ではあります。
保育園の開業・経営で成功するためのポイント
保育園を開業して経営していく中で、成功させるためのポイントがいくつかあります。順番に解説していきます。
長期的な計画を立てること
保育園を開業・経営する際、長期的な計画を立てることがすごく重要です。将来を見越して戦略を練ることで、長期的に運営が可能になります。
長期的な計画は、保育園の成長、資金調達、スタッフの採用と維持、施設の改善、そして子供たちの発達ニーズへの対応を含みます。
園児は入園すると数年間は通ってくれることが多いので、入園から卒園までの過程をしっかり考えて、次の子にも通わせてあげたいと思ってもらうことが必要です。
子供の安全を考えられているか
保育園の運営において、子供たちの安全は最優先です。保育園内外でのリスクを最小限に抑え、安全対策を徹底することが不可欠です。
子供の安全を確保するためには、施設の安全性を確認し、定期的な点検やメンテナンスを行いましょう。
また、火災や自然災害への備え、感染症対策なども考慮に入れましょう。時には、外に遊びに行くこともありますが、常にリスクと隣り合わせという気持ちが大切です。
保育士の待遇面・職場環境をよくする
保育園の成功には、優れた保育士が欠かせません。そのため、保育士の待遇面と職場環境を改善することは非常に重要です。
保育士たちは子供たちの成長に影響を与える存在であり、彼らが満足し、モチベーションを保つことは大切です。競争力のある給与、福祉、キャリアの成長機会を提供し、働きやすい環境を整えることで、保育士たちはより熱心に仕事に取り組むことができます。
また、育休や産休制度はもちろん取り入れて、長く働きやすい職場を作りましょう。
保育園を開業する前に知っておくべきこと
保育園を開業することは、子供たちとその家族にとって貴重なサービスを提供する素晴らしいことです。しかし、成功するためには事前に知識を深め、計画を立てる必要があります。以下では、保育園を開業する前に知っておくべき重要なポイントを解説します。
保育園の仕事内容
・子供の保育
・園児の集客
・保育士の採用・管理・教育
・事務作業・売上・経費管理
・保育園のイベント企画
などです。
保育園経営で必須の法律
保育園を経営するには、法律や規制を遵守することが不可欠です。
しかし、児童福祉法や建築基準法、消防法など多くの法律があり、すべてを把握しておくことは難しいでしょう。そこで、保育事業に詳しい専門家に業務委託して完全に任せる方法もあります。
そうすることで、保育事業にも専念できますし、法律を一から勉強する必要もありません。
収益を上げるための集客
保育園経営は収益を上げるビジネスでもあります。ウェブサイトの構築、SNSの活用、地域コミュニティとの協力など、集客に努力を注ぎましょう。
集客をするためには、SNSを使うと費用もほとんどかからず、上手くいけば大勢の人に認知されるのでおすすめです。
さらに、顔出しをすると、どんな保育士が働いているのかがわかるので、親御さんも預けやすくなるでしょう。
保育園開業に適切な時期
保育園を開業するべき時期は年に2回あります。それは2~3月と9月です。
2~3月である理由は、年度始まりである4月の入園式前に慣らし保育を行えるからです。
9月である理由は、母親が新たに就職したり、パートに行き始める時期だからです。
しかし、この時期に開業してすぐに園が忙しくなると、円滑にスタッフ同士のコミュニケーションが取れないことや園でのルールが確立しないままの運営になってしまうこともあります。トラブルの原因にもなりやすいので注意が必要です。
まとめ
本記事では、保育園の開業について詳しく解説しました。
保育園を開業して運営していくのは決して簡単なことではないので、経営していくための重要なことを抑えて、失敗しない事業計画を立てましょう。
保育園開業で活用できる主な補助金・助成金は以下の4つです。
・就学前教育・保育施設整備交付金(旧保育所等整備交付金)
・保育所等改修費等支援事業
・保育所等におけるICT化推進等事業
・保育体制強化事業
保育園の開業・経営で成功するためのポイントは以下の3つです。
・長期的な計画を立てること
・子供の安全を考えられるか
・保育士の待遇面・職場環境をよくする
詳細は本文で解説しているので、保育園で開業したい方は参考にしてください。
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この記事の執筆者
フランチャイズ支援歴10年
松田 和也
大阪大学人間科学部卒業後、大手フランチャイズ本部の加盟開発担当として新卒入社。その後SVとして10年間従事し、フランチャイズオーナーの経営指導に携わる。過去100名以上のフランチャイズオーナーを支援し、撤退率3%以下の実績を持つ。2022年1月にいくらやフランチャイズ立ち上げメンバーとして参画。