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独立・開業

放課後デイサービス開業に必要な資金や資格・失敗しないコツを解説

放課後デイサービス開業に必要な資金や資格・失敗しないコツを解説

放課後等デイサービスの開業を考えている人の中には、「自分でも開業できるのか」「開業するためには資金はどれくらい必要なのか」と不安になる人も多いでしょう。

この記事では、放課後等デイサービスの開業に必要な資金や資格、失敗しないコツについて解説します。これから放課後等デイサービスを始めたい方は参考にしてください。

放課後等デイサービスとは?

まずこの章では、放課後等デイサービスとは、「どのようなサービスなのか?」「類似サービスとの違いは何なのか?」ということを見ていきます。

また、放課後等デイサービスの需要は今後どうなっていくのかも解説していきます。

放課後等デイサービスは「障害者支援サービス」のこと

放課後等デイサービスとは、放課後や土日や長期休暇に障害のある子供が活用できる「障害児支援サービス」です。

対象年齢は6~18歳で、ただ施設で預かるだけではありません。自分でできることを増やすためのプログラムや取り組みを実施して、自立できるようにサポートを提供します。

具体的な活動としては、下記が挙げられます。

  • 日常生活を自分で行えるようにするための取り組み
  • 感情・感性を引き出し安定させるための行動支援
  • 地域や社会との交流機会の提供
  • 学校での学習や周囲とのコミュニケーションをとれるようにするための取り組み

児童発達支援との違い

放課後等デイサービスと児童発達支援には大きな違いがあります。

それは、対象年齢です。放課後等デイサービスの対象年齢は6~18歳なのに対して、児童発達支援は0~6歳です。

また、放課後等デイサービスは既に学校に通っている子供を対象にしているので、学習や就職支援につながるサポートを重点的に行います。

一方、児童発達支援は未就学児を対象としているので、日常生活やコミュニケーション力の習得などを重点的に行います。ともに、療育手帳は不要です。

放課後等デイサービスの需要や市場規模

放課後等デイサービスの需要の増加とともに、事業所数と利用者数は右肩上がりに伸びています。厚生労働省のデータによると、2012年~2021年の間に事業所数は6倍近く増えています。

また、放課後等デイサービスの利用者数も2014年~2021年の間に3倍以上の増加となっているのです。

つまり、これからも放課後等デイサービスの需要は伸びていき、支援が必要となってくるでしょう。

では、この需要増加の要因はというと、共働き世帯の増加や障害児のための支援制度が整い、支援金が充実されてきたことにあります。

共働き世帯が増えると自分たちで子供を育児できない時間もあるので、プロの方に手伝ってもらう人が増えます。

さらに、国や自治体が制度改革や支援金の支給を行うことで、経済的問題で子供を通わせれなかった方々も利用ができるようになったのです。

参照(厚生労働省/障害福祉分野の最近の動向

参照(厚生労働省/障害児通所支援の現状等について

参照(厚生労働省/児童発達支援・放課後等デイサービス

放課後等デイサービスの開業は儲かる?平均年収は?

放課後等デイサービスの経営者の年収は、350~500万円と言われています。これは、国民の平均年収と同じような水準と言えるでしょう。

一方で、全事業所の約4割程度が赤字経営という調査結果もあります。そのため、業界自体は需要も伸びてきておりますが、事業所ごとの格差も大きいということです。

また、放課後等デイサービスをメインではなく、サブ事業として取り組んでいる企業も少なくないので、この事業での収益をそこまで気にしていない可能性もあります。

放課後等デイサービスの開業に必要な資金

放課後等デイサービスを開業・経営していくためには、資金が必要です。ここでは、詳しい内訳についてもお話ししていきます。

放課後等デイサービスの開業資金

放課後等デイサービスの開業資金は、600~1,000万円以上とかなり幅があります。これは、規模や立地によって異なるためです。

項目 資金
法人設立費 10~25万円
物件取得費 150~200万円
内装工事費 200~300万円
車両購入費 50~300万円
設備・備品費 50~100万円
広告宣伝費 50万円
求人広告費 50万円

法人設立費は、株式会社が約25万円、合同会社と一般社団法人が約10万円です。

物件取得費は、賃料の約10か月分が相場となっています。

内装工事費は、居ぬき物件が見つかれば安く済みますが、スケルトン物件だと一からの作業となるので、高い金額で予算を組んでおきましょう。

車両費は、新車か中古車か、台数によっても変わってきて、中古だと50万円前後~あります。

設備・備品費は、業務を行うのに必要な机やいす、電話、PCなどの他にも冷蔵庫や電子レンジ、教材やおもちゃなどが必要です。

広告費は、集客と採用のための費用が掛かり、WEB媒体への掲載や集客を別企業に依頼すると高くなります。

放課後等デイサービスの運営資金

項目 資金
賃料 20万円
光熱費 2万円
人件費 80万円
その他の経費 10万円

放課後等デイサービスの収入のほとんどは、請求してから2か月後に入金される仕組みなので、経営が軌道に乗るまでのことも考えて、3~4カ月分の運営資金を準備しておくといいでしょう。

放課後等デイサービスの開業資金の調達方法

放課後等デイサービスを開業するのに資金調達を行う必要があります。以下でその方法を3つ紹介します。

金融機関からの融資

多くの場合、銀行や信用金庫などの金融機関から融資を受けることができます。

しかし、審査は少し厳しめで、自己資金が求められることも多いので、初めての開業の方は審査に落ちることもよくあります。

信用保証付き融資

借主の返済が滞った場合に、信用保証協会が金融機関に「立て替え払い」を行う融資制度。その代わり、所定の信用保証料の支払いが義務である。

プロパー融資

保証人なしで自分で100%の責任を負う融資で、審査が厳しくなりやすい

金融機関の融資は上記のような制度があり、自分に合ったものを選びましょう。フランチャイズで開業する場合は、融資に関してもサポートしてくれる本部が多いので、審査に通りやすくなります。

日本政策金融公庫からの融資

日本政策金融公庫での融資は、初めての人も審査が通りやすくおすすめです。

新創業融資制度

新たに事業を始める方や事業開始後税務申告を2期終えていない方を対象とした保証人や担保なしで上限3,000万円の融資制度

新規開業資金

新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方を対象とした、保証人や担保なしで最大7,200万円の融資制度

上記のような制度があり、金融機関の融資が通らなかった方や低金利でお金を借りたい方はおすすめです。

創業補助金・助成金の活用

一部の地域では、新しいビジネスをサポートするために補助金や助成金が提供されています。これは、特定の条件を満たす場合に受けられる資金です。

放課後等デイサービスの補助金・助成金で利用されるものをいくつか紹介します。

人材確保等支援助成金(雇用管理制度助成コース)

従業員の離職率低下を目標に取り組みを行う事業者に対しての助成金

特定求職者雇用開発助成金

高年齢者や障害者等の就職困難者をハローワーク等の紹介により、継続して雇用する事業者に対しての助成金

キャリアアップ助成金

非正規雇用者を正社員として雇用する場合に受け取れる助成金

メリット

補助金や助成金は、開業費用の一部をカバーするための貴重な支援です。条件に合致する場合、返済の必要がないことが多いです。

デメリット

補助金や助成金は競争率が高いことがあるため、受給するまでに時間がかかることがあります。また、一部のプログラムには厳格な条件が設定されていることもあります。

放課後等デイサービスの開業に必要な資格や条件

放課後等デイサービスの開業には、必要要件を満たし、条件に従わなければなりません。ここでは、開業するための資格や条件について解説します。

法人格の取得

放課後等デイサービスを開業するためには、個人事業主ではいけないので、必ず法人を設立する必要があります。

法人の種類は「株式会社」「合同会社」「NPO法人」「医療法人」「一般社団法人」「社会福祉法人」など様々です。以下で、それぞれの特徴やメリットについてお伝えします。

法人格の種類 特徴 メリット デメリット
株式会社 ・営利目的で経営する
・出資者に利益の配分を行う
・社会的信用が高い ・設立費が高い
合同会社 ・営利目的で経営する
・出資者も経営する
・利益配分が自由
・設立費が安い
・リスクが少ない
・社会的信用が株式会社より低い
NPO法人 ・非営利組織
・利益配分を行わない
・法人税が課税されない ・理事3名、監事1名、社員10名が必要
医療法人 ・営利目的で経営する
・病院・医師が常時勤務する診療所または介護老人保健施設を開設する組織
・社会的信用が高い ・法人化に伴う管理業務が増加
一般社団法人 ・非営利組織
・登記手続きが簡単
・社会的信用が高い ・利益分配を社員に行えない
社会福祉法人 ・非営利組織
・様々な福祉施設の運営
・多くの補助が受けられる
・税制優遇措置
・設立・運営条件が厳しい

7割以上の事業者が株式会社や合同会社のような営利企業となっています。それぞれ比較して、自分に合っているものを選びましょう。

人員基準

放課後等デイサービスを開業する際に、人員基準が設けられています。

役職名 配置基準 資格要件
管理者 1人以上(常勤) なし
児童発達支援管理責任者 1人以上(常勤) 実務経験と研修修了が条件
児童指導員または保育士 児童が10人まで…2人以上
児童が10人以上…10人から5人以下ごとに1人追加
指導員任用資格(大学の特定の学部・学科の卒業、社会福祉士、精神保健福祉士、児童福祉事業の実務経験等)、保育士資格
機能訓練担当職員 必要に応じて配置(児童指導員または保育士にカウントする場合は、半数以上は児童指導員または保育士である必要がある) 理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、心理指導担当職員(臨床心理士、公認心理士等)
看護職員 必要に応じて配置 保健師、助産師、看護師、准看護師

設備基準

放課後等デイサービスを開業する際に、設備基準が設けられています。

設備 基準
指導訓練室 子供が過ごす場所で児童1人当たり2.47㎡以上の面積が必要
事務室 スタッフが作業を行う部屋で、備品を置けるスペースが必要
相談室 保護者等と話をする場所で独立した部屋もしくはパーテーションの設置が必要
洗面所・トイレ 洗面所とトイレは分ける、石鹸とペーパータオルの設置が必要

運営基準

放課後等デイサービスを開業する際に、運営基準が設けられています。

基準 条件
利用定員が10名以上であること 重症心身障害児が主である場合は定員は5名以上
個別支援計画の作成 子供の特性などを理解して個別の支援計画を作成する
サービス内容や手続きの説明と同意 子供や保護者に施設やサービスについての説明を敷いて同意をもらう
利用者の指導・訓練等の実施 子供が必要な能力を高めるためのプログラムや取り組みを行う
利用者又は家族からの相談及び援助 子供の状況を保護者に共有して、保護者からの相談を受け、アドバイスも行う
利用者管理台帳の準備 日々の行動を記録し、状況を把握・確認できるようにする
利用者の病状急変時等における緊急体制の整備 提携の医療機関を決めておく

放課後等デイサービスを開業する流れや準備

放課後等デイサービスを開業するためには、様々な準備がありますが、流れに沿って順番に行いましょう。初心者でもわかりやすく詳しく解説していきます。

法人を設立する

最初に、放課後等デイサービスを開業するには法人を設立する必要があります。

法人の設立は、どの方法で設立するかを決めて、登記や定款作成等の手続きが必要です。

料金は株式会社を設立する場合が約25万円、合同会社が約10万円です。もし自分で行えない場合は、行政書士などに依頼しましょう。

事業計画書を作成する

次に、放課後等デイサービスを開業するためには、経営方針やコンセプト、収支計画などを記載する事業計画書の作成が必要です。

営業許可を得る時や金融機関からの融資を受ける際にも事業計画書が必要です。

開業資金の調達を行う

放課後等デイサービスを開業するためには、十分な開業資金が必要です。

資金の調達方法は先ほどお伝えしたような、銀行融資や補助金の活用などが考えられます。

また、請求後に収入が振り込まれるまで2カ月かかるので、開業時に必要な資金だけでなく、運営資金も考慮しておく必要があります。

立地や物件を決める

放課後等デイサービスが上手くいくためには、立地や物件の選定が重要です。設備基準があるので、基準を満たせるような物件を探しましょう。

利用者にとってアクセスしやすく、またスタッフにとって働きやすい場所を見つけることが必要です。賃料も考えて物件を探しましょう。

スタッフを採用する

放課後等デイサービスの運営には、人員基準を守ることが必要です。資格保有者も必要になるので、早めに人員を確保しておくほうが良いでしょう。

必要な人員を算出して、どの役職が足りないかを明確にしておくことも大切です。採用方法は、WEBの求人媒体、人材紹介会社、ハローワーク、SNS、などがあります。

物件の改装と設備を整える

放課後等デイサービスの物件は、設備基準を満たし、利用者が快適に過ごせるように整える必要があります。

保護者の方と話し合いをする機会もあり、プライベートが守られる空間作りが大事です。

指定申請を行う

放課後等デイサービスを開業するためには、行政からの許可を受けるための指定申請という申請手続きが必要です。

この際に、指定基準を満たしている証明書類を提出します。期日はその都道府県によって変わりますが、開業月の2カ月前の末日と定められていることが多いです。

必要書類や条件がわからない場合は、早めに窓口に相談しておきましょう。

集客活動を行う

最後に、放課後等デイサービスを運営するためには利用者を集めることが不可欠です。

開業前から、HP作成やSNS、名刺作成、チラシ配布など様々な方法で集客を行いましょう。学校や障害児支援施設などへの訪問や事業説明会を行うのも効果的です。

放課後等デイサービスを開業して失敗しないためのコツ

放課後等デイサービスを経営していくにあたり様々な困難があります。実際、放課後等デイサービスの中には赤字企業が4割ほどあるので、上手く経営していくにはコツが必要です。

そこで、失敗しないためのコツを5つお伝えします。

品質の高いプログラムを提供する

放課後等デイサービスの魅力は提供するプログラムにあります。

継続して利用してもらうには、お子さんたちが楽しみながら成長できるようなプログラムを提供することが重要です。

例えば、外で行うアクティビティから屋内で楽しむ学習まで様々なプログラムを準備しましょう。

そして、個別に成長スピードやできることが異なるので、その子に合った接し方ややり方を心掛けることが大事です。

他社に負けない独自性のあるサービスを提供する

競合が激しい中で差別化するためには、他社に負けない独自性のあるサービスを提供することが大切です。

全国に事業所がたくさんあるので、もう既に様々なプログラムやサービスが提供されているでしょう。

そのため被ってしまうこともありますが、あくまで自分が開業するエリアの競合と差別化を行うことが大事なので、近辺の競合事業者をよく調査して自社独自のサービスを考えましょう。

開業エリアを入念にチェックして物件を決める

立地や物件の選定は、経営の成功に直結します。

開業エリアを決める時は、対象の子供の人口と競合の数を知ることが大事です。

当然、どんなにいいサービスを提供できたとしても、通ってくれる子供がいなければ意味がありません。例えば、近くに学校や公園、住宅街があるかないかは子供の人口を知る1つの目安です。

人のことを考えて行動できるスタッフを雇う

スタッフは放課後等デイサービスの顔とも言えます。

人のことを考え、柔軟な対応ができるスタッフを雇うことがポイントです。採用時に性格がわからない場合もあるので、しっかり教育しましょう。

子供はいろいろな感性を持ち、それぞれ異なる性格を持っているので、その子に合わせて接してあげることで楽しく過ごすことができます。

集客活動はいろいろな方法を試してみる

集客は事業をしていくうえで、一番大切と言っても過言ではありません。

人が集まらなければ儲からず、赤字になってしまい、スタッフや自分の生活を苦しめてしまいます。

集客方法は様々ですが、学校や障害者支援施設を訪問したり、広告やチラシで宣伝する方法があります。

また、SNSを活用して、公開できる範囲で施設の雰囲気やスタッフの紹介などをアピールすることも有効的手段です。

実際に通わせる場所やスタッフの事を知っていると安心できるからです。

まとめ

本記事では、放課後等デイサービスの開業について詳しく解説しました。

放課後等デイサービスは、事業所数と利用者数ともに右肩上がりで伸びています。一方で、赤字の事業所も約4割程度あるので、必ずしも儲かっているわけではありません。

開業前には、人員基準、設備基準、運営基準をそれぞれ満たしたうえで、許可申請を行う必要があります。

放課後等デイサービスを開業する流れや準備
・法人を設立する
・事業計画書を作成する
・開業資金の調達を行う
・立地や物件を決める
・スタッフを採用する
・物件の改装と設備を整える
・指定申請を行う
・集客活動を行う

放課後等デイサービスを開業して失敗しないためのコツ
・品質の高いプログラムを提供する
・他社に負けない独自性のあるサービスを提供する
・開業エリアを入念にチェックして物件を決める
・人のことを考えて行動できるスタッフを雇う
・集客活動はいろいろな方法を試してみる

詳細は本文で解説しているので、デイサービスを開業したい方は参考にしてください。

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この記事の執筆者

フランチャイズ支援歴10年

松田 和也

大阪大学人間科学部卒業後、大手フランチャイズ本部の加盟開発担当として新卒入社。その後SVとして10年間従事し、フランチャイズオーナーの経営指導に携わる。過去100名以上のフランチャイズオーナーを支援し、撤退率3%以下の実績を持つ。2022年1月にいくらやフランチャイズ立ち上げメンバーとして参画。

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