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独立・開業

訪問介護の開業は儲かる?一人でも可能?開業費用や失敗しない方法を解説

訪問介護の開業は儲かる?一人でも可能?開業費用や失敗しない方法を解説

訪問介護事業は、一人では開業ができず、国から定められた基準に従い事業を行う必要があります。では、なぜ一人で開業できないのか。

この記事では、訪問介護を開業するための条件、開業方法、資金・年収について解説します。これから訪問介護事業を始めたい方は参考にしてください。

訪問介護のサービス内容と将来性

訪問介護は、高齢者や障害者などの自宅の訪問して介護を行うことです。自分だけでは日常生活が送れない方を対象としています。以下では、サービス内容と将来性について説明します。

訪問介護のサービス内容

訪問介護のサービス内容は以下の通りです。

  • 身体介護・・・食事、入浴、更衣、清拭、排泄など身体周りの介護
  • 生活援助・・・掃除、洗濯、調理、買い物など日常生活の介護
  • 通院時などの乗降車等の介助・・・通院時の送迎や乗り降りの介助、通院先で介助

訪問介護の将来性

高齢化が進み、介護士の不足が問題とされている現代では、今後も訪問介護の需要は増えていくでしょう。

政府や地方自治体は、団塊世代が75歳以上となる2025年を目途に医療・介護・予防・住まい・生活支援が包括的に確保される体制(地域包括ケアシステム)の構築の実現を目指しています。

これは、住み慣れた街で最後まで自分らしい生活を送ることが目的です。

65歳以上の人口は、現在3,500万人を超え、2042年の約3,900万人でピークを迎えますが、その後も増加していくことも予測できます。つまり、訪問介護の介護業界のビジネスは今後も必要になってくるのです。

一方で、このような背景の中、介護業界に参入している会社や個人が増えているので、競合が多いのも事実です。

単純に開業するだけでなく、しっかりしたビジョンと計画を立てる必要があります。

訪問介護の開業は一人ではできない

訪問介護を一人で開業することはできません。理由は以下の3つの役職が必要だからです。

  • 管理者
  • サービス提供責任者
  • 訪問介護員

これは、介護保険法に基づいて法律で定められています。また、個人事業主では開業できないので、必ず法人を立ち上げる必要があります。

訪問介護の開業は儲かる?平均年収は?

訪問介護を開業した方の年収は、400~1,000万円ほどと幅があります。

訪問介護の収益は、国によってある程度定められていて、事業所ごとに料金体系を変更できないので、価格差を生み出すのは難しいのです。

ではここで、訪問介護の収益モデルを見ていきます。

まず、訪問介護業者の収入は、介護給付金(7~9割)と利用者の自己負担(1~3割)となっています。

時間 単位
身体介護 20分未満 167単位
20分以上30分未満 250単位
30分以上1時間未満 396単位
1時間以上 579単位(30分を増すごとに+84単位)
生活援助 20分以上45分未満 183単位
45分以上 225単位
通院等乗降介助 1回につき 99単位

基本的に1単位当たり×10円の計算になります。

例えば、身体介護(20分以上30分未満 250単位)と生活援助(20分以上45分未満 183単位)を行う場合、

250+183単位=433単位

433単位×10円=4,330円

つまり、4,330円が売り上げとなります。

収入における注意点は、以下の通りです。

  • 介護報酬体系は事業所ごとに変更できない
  • 介護報酬は保険団体に請求して入金まで2カ月かかる
  • 3年に1回介護報酬体系が見直される

収益に関してのメリットは、国から収入を受け取ることができるので、未払いのリスクが少ないことです。

訪問介護の開業に必要な資金

訪問介護の開業には、多くの資金が必要です。開業資金だけでなく、運営資金も必要になってくるので、それぞれいくら必要なのか説明していきます。

訪問介護の開業資金

訪問介護の開業費用は、500万円ほどは必要です。地域や規模などによっても異なります。

項目 資金
法人設立費 10~30万円
物件取得費 50~100万円
人件費(3か月) 180~240万円
車両購入費 100~200万円
設備・備品費 20~50万円
指定申請費用 3万円
広告宣伝費 0~50万円
合計 363~673万円

法人設立費は、株式会社が約30万円、合同会社と一般社団法人が約10万円です。

物件取得費は、賃料の6~10か月が相場となっていて、設備条件に当てはまる必要があります。

人件費は、国からの介護報酬の支払いが最低2カ月かかるので、3か月分は準備しておいた方がいいでしょう。

車両費は、新車か中古車でも変わってきます。

設備・備品費は、業務を行うのに必要な机やいす、電話など様々です。

指定申請費用は、約3万円で申請先によって異なります。

広告宣伝費は、方法によって異なりますが、お金をかける場合は100万以上かかることもあります。

訪問介護の運営資金

訪問介護の運営費は、以下のような項目が必要です。

  • 賃料
  • 人件費
  • 光熱費
  • 通信費
  • ガソリン代
  • 自動車税・保険料
  • 広告費
  • 消耗品費

などがあり、他にもその時々によって必要な費用もあるでしょう。

開業エリアや規模によるので、費用は一概には言えませんが、1人当たりの給料相場は20~30万円となっています。

売上が上がるまで時間がかかるうえ、従業員を最初から雇用しないといけないので、運営資金には余裕をもって開業しましょう。

訪問介護の開業に必要な資金調達方法

訪問介護を開業するのに資金調達を行う必要があります。以下でその方法を3つ紹介します。

金融機関からの融資

多くの場合、銀行や信用金庫などの金融機関から融資を受けることができます。しかし、審査は少し厳しめで、自己資金が求められることも多いので、初めての開業の方は審査に落ちることもよくあります。

信用保証付き融資…借主の返済が滞った場合に、信用保証協会が金融機関に「立て替え払い」を行う融資制度。その代わり、所定の信用保証料の支払いが義務である。

プロパー融資…保証人なしで自分で100%の責任を負う融資で、審査が厳しくなりやすい

金融機関の融資は上記のような制度があり、自分に合ったものを選びましょう。フランチャイズで開業する場合は、融資に関してもサポートしてくれる本部が多いので、審査に通りやすくなります。

日本政策金融公庫からの融資

日本政策金融公庫での融資は、初めての人も審査が通りやすくおすすめです。

「新創業融資制度」…新たに事業を始める方や事業開始後税務申告を2期終えていない方を対象とした保証人や担保なしで上限3,000万円の融資制度

「新規開業資金」…新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方を対象とした、保証人や担保なしで最大7,200万円の融資制度

上記のような制度があり、金融機関の融資が通らなかった方や低金利でお金を借りたい方はおすすめです。

創業補助金・助成金の活用

一部の地域では、新しいビジネスをサポートするために補助金や助成金が提供されています。これは、特定の条件を満たす場合に受けられる資金です。

訪問介護の補助金・助成金で利用されるものをいくつか紹介します。

  • トライアル雇用奨励金
  • キャリアアップ助成金
  • IT導入補助金

メリット

補助金や助成金は、開業費用の一部をカバーするための貴重な支援です。条件に合致する場合、返済の必要がないことが多いです。

デメリット

補助金や助成金は競争率が高いことがあるため、受給するまでに時間がかかることがあります。また、一部のプログラムには厳格な条件が設定されていることもあります。

訪問介護の開業に必要な資格や3つの条件

訪問介護の開業には、人員基準、設備基準、運営基準の3つの条件を満たす必要があります。以下では、3つの条件について説明します。

人員基準

訪問介護の事業を開業するには、「訪問介護員」「サービス提供責任者」「管理者」の3つを配置する必要があります。

役職 配置基準 資格条件
訪問介護員 サービス提供責任者を含めて常勤換算2.5人以上 介護福祉士
介護職員実務者研修修了者
介護職員初任者研修修了者
旧介護職員基礎研修修了者
旧訪問介護員1級課程修了者
旧2級課程修了者
看護師または准看護師
サービス提供責任者(管理者との兼務可能) 介護福祉士
介護職員実務者研修修了者
旧介護職員基礎研修修了者
旧ホームヘルパー1級
看護師または准看護師
40人までは1名、平均利用者の人数が40人を超えるごとに1人以上追加
管理者(サービス提供責任者との兼務可能) なし 常勤で1人(事業所の責任者)

設備基準

設備や備品にも基準が設けられていますが、人員よりは細かい設定はされていません。

以下では、5つの項目を確認していきます。

  1. 事務所…事業を行うのに必要な広さがあることが条件で、机やいすなどを置くスペースを確保すること。備品等を置く場所も必要。送迎車を置く駐車場スペースも確保しないといけない。
  2. 相談室…事務所に利用者やその家族が来た時に話ができるスペースを確保すること。四方をパーテーション等で囲ったり、部屋を分けることでプライバシーを守ることができるようにする
  3. 洗面台や衛生用品…感染症を防ぎ、清潔に保つために衛生用品を準備しないといけません。トイレ以外に手を消毒できる洗面台を設置する
  4. 鍵付きの書庫…利用者の個人情報を守る観点から鍵付きの書庫を準備しないといけない
  5. 備品…PCや机、いす、電話などの業務で必要な備品を揃える必要がある。

上記の5つの項目の条件を満たしていれば、建物には特別な基準はありません。自宅での開業も可能です。

運営基準

訪問介護事業を行うために、守るべき運営基準です。

以下では、主な運営基準を挙げていきます。

  • サービスの提供内容と手続の説明および同意
  • サービスの提供拒否の禁止
  • サービス提供が困難になった時の対応
  • 利用料などの受領方法
  • 身分を証する書類の携行
  • 訪問介護計画書の作成
  • 利用者に関する市町村への通知
  • 設備、備品などについての衛生管理
  • 訪問介護員の健康管理や衛生管理
  • 同居家族へのサービス提供は行わないこと
  • 緊急事態への対応が整備され、速やかに対処する
  • 介護等の総合的な提供

これらは、地方自治体によって異なる場合があります。上記の運営基準は、文書にして保管しておく必要があります。

訪問介護の開業の流れや必要な準備

訪問介護を開業するための流れや準備について以下で説明します。

法人格の取得

訪問介護で開業するためには、個人事業主ではいけないので、必ず法人を設立する必要があります。

法人の種類は「株式会社」「合同会社」「NPO法人」「医療法人」「一般社団法人」「社会福祉法人」など様々です。以下で、それぞれの特徴やメリットについてお伝えします。

法人格の種類 特徴 メリット デメリット
株式会社 営利目的で経営する
出資者に利益の配分を行う
社会的信用が高い 設立費が高い
合同会社 営利目的で経営する
出資者も経営する
利益配分が自由
設立費が安い
リスクが少ない
社会的信用が株式会社より低い
NPO法人 非営利組織
利益配分を行わない
法人税が課税されない 理事3名、監事1名、社員10名が必要
医療法人 営利目的で経営する
病院・医師が常時勤務する診療所または介護老人保健施設を開設する組織
社会的信用が高い 法人化に伴う管理業務が増加
一般社団法人 非営利組織
登記手続きが簡単
社会的信用が高い 利益分配を社員に行えない
社会福祉法人 非営利組織
様々な福祉施設の運営
多くの補助が受けられる
税制優遇措置
設立・運営条件が厳しい

7割以上の事業者が株式会社や合同会社のような営利企業となっています。それぞれ比較して、自分に合っているものを選びましょう。

事務所や設備などの準備

設備基準の所で伝えたように、訪問介護であっても事務所を準備する必要があります。

基本的には設備基準を満たしていれば大丈夫ですが、車やバイクなどを置くスペースも確保しておきましょう。

人員の確保

こちらも先ほどお話ししたように、一人では開業ができないので、「訪問介護員」「サービス提供責任者」「管理者」の3つの役職を配置する必要があります。

「訪問介護員」「サービス提供責任者」は資格を持っている人を確保しないといけないので、早めに見つけおく必要があります。

指定書類の提出

訪問介護を開業するためには、指定申請を行い、指定権者から許可をもらう必要があります。

指定権者は各都道府県や市町村となっており、あらかじめ期日や書類を確認しておきましょう。

必要書類は以下の通りです。

  • 訪問介護事業の認定申請書
  • 登記簿謄本
  • 決算書や貸借対照表、事業計画書
  • 従業員の雇用契約書や履歴書、資格証の写し
  • 訪問介護事業所の図面や写真
  • 運営規定
  • 利用者からの苦情を処理するために講ずる措置の概要
  • 誓約書及び誓約書別紙
  • 介護給付費算定に係る体制等に関する届出書

申請が審査に通ると、6年間は事業者として認められてサービス提供できます。

訪問介護の開業での失敗例と解決策

訪問介護の事業を開業しようとする場合、多くの課題が立ちはだかります。ここでは、訪問介護の開業における失敗例とそれに対する解決策について、初心者でも理解しやすいように説明します。

資金繰りでの苦労

訪問介護事業を開業するには、設備や人材の雇用、広告宣伝など、数百万円~の費用がかかります。初期段階で資金繰りに苦労することがあります。

資金繰りに困らないように、計画と予算管理をしっかり行うことが必要です。予算を立て、事業計画を策定し、費用対効果の高い方法を見つけることが大切です。また、金融機関からの融資や助成金、補助金の活用をしましょう。

人材確保の難しさと離職率の高さ

訪問介護事業は質の高いサービス提供するための人材が不可欠ですが、適切なスタッフを見つける難しさと離職率の高さが課題となります。

人員基準の条件として、資格を持っている人の採用が必要です。また、介護業界は離職率が高いので、会社に長く残ってもらうようにするには、従業員の待遇を良くする必要があります。

つまり、人材確保には適切な採用プロセスと従業員の満足度向上が必要です。採用プロセスは、採用広告の方法や会社の給与などの条件を競合他社と比較して、自分の会社の待遇面をよくすることが大事です。

また、働いているうちに出てくるスタッフの声に耳を傾け、職場環境の改善を随時行いましょう。

集客が上手くいかない

訪問介護事業は需要が高まっている一方で、新規参入者も多く競争が激しいため、集客が難しいことがあります。

新規クライアントを獲得することが難しい場合、事業が持続可能でなくなるリスクがあります。

まず、集客にはマーケティング戦略が必要です。ウェブサイトの作成、SNSの活用、地域コミュニティと協力し、信頼性と専門性をアピールすることが重要です。

また、利用者にリピーターになってもらうことで、売り上げは安定しやすくなります。

そのために、常に品質のいいサービスの提供を心がけましょう。そうすることで、口コミや評判が広がり、家族や友達から紹介してもらうこともでき、集客ができるでしょう。

まとめ

本記事では、訪問介護の開業について詳しく解説しました。

訪問介護は、「人員基準」「設備基準」「運営基準」に従って経営する必要があります。そのため、一人では開業ができず、法人を設立し、人を雇って開業する必要があります。

訪問介護の開業に必要な資格や3つの条件
・人員基準
・設備基準
・運営基準

訪問介護の開業の流れや必要な準備
・法人格の取得
・事務所や設備などの準備
・人員の確保
・指定書類の提出

詳細は本文で解説しているので、訪問介護で開業をしたい方は参考にしてください。

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この記事の執筆者

フランチャイズ支援歴10年

松田 和也

大阪大学人間科学部卒業後、大手フランチャイズ本部の加盟開発担当として新卒入社。その後SVとして10年間従事し、フランチャイズオーナーの経営指導に携わる。過去100名以上のフランチャイズオーナーを支援し、撤退率3%以下の実績を持つ。2022年1月にいくらやフランチャイズ立ち上げメンバーとして参画。

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